コンクリートブロック塀の点検とともに通学路や避難経路の安全も確認すべき!【大阪北部地震から考える】

2018年6月22日

2018年6月18日月曜日、大阪で震度6弱の地震がありました。

被災された方には心よりお見舞い申し上げます。

大阪府高槻市では、小学校のプールのブロック塀が倒壊。通学中の児童が亡くなりました。心よりお悔やみ申し上げます。

  • 避難場所にもなる小学校の塀が倒壊したこと
  • 行政側も違法建築である認識がなかったこと
  • 危険性が指摘されたにも関わらず対策がされなかたこと
  • 2年前に市教育委員会が検査して「安全性に問題はない」と判断したこと

問題点がいくつもあり、対策がなされていれば、こんなことにはならなかったのではないか…。

小学生の子を持つ親として、建設業に携わってきた者として憤りを感じています。

今回は、

  • ブロック塀に限らず自分の家の塀や建物の安全確認をすべきこと
  • 自分たちの子どもが毎日歩く通学路に危険がないかどうか、最寄りの避難場所への経路の確認をすべき

について考えていきたいと思います。

コンクリートブロック塀の高さ制限、控え壁

コンクリートブロック塀の画像

今回倒壊した小学校のプールサイドのコンクリートブロック塀は、

通学路の地面からブロック塀の高さは3.5メートル。
プールサイドからの高さは1.6メートル。

ブロック塀のみ積み上げられた高さで3.5メートルというとそれだけで違法建築になりますが、このコンクリートブロックが積み上げられ高さは1.6メートルということになります。

ブロック塀の高さの制限は地盤面から2.2メートル

高さ制限も、おそらくプールサイドからの高さから考えられ問題無いという判断がされたのだと推測されます。

しかし、1.9メートルの高さの擁壁の上に1.6メートルのコンクリートブロック。控え壁もなく、転倒防止の対策もなく施工され、放置されていたことは違法建築であり、問題です。

「控え壁がなかった」は違法建築。そもそも擁壁の上のコンクリートブロック塀を作ったことにも疑問

 

コンクリートブロック塀の構造の引用画像
出典:ブロック塀を点検しよう!|黒潮町公式ホームページ/Copyright© Kuroshio-Town All Rights Reserved.

建築基準法では、

高さ1.2メートルを超えるコンクリートブロック塀には3.4メートル以下ごとに控え壁を設けなくてはならないことが明記されています。

第62条の8 塀 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ1.2m以下の塀にあつては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

一 高さは、2.2m以下とすること。

二 壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあつては、10cm)以上とすること。

三 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径9mm以上の鉄筋を配置すること。

四 壁内には、径9mm以上の鉄筋を縦横に80cm以下の間隔で配置すること。

五 長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの1/5以上突出したものを設けること。

六 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。

七 基礎の丈は、35cm以上とし、根入れの深さは30cm以上とすること。

情報源: 建築基準法施行令 第62条の8 塀 - 建築プレミアム

上記の五号で控え壁について記述されています。

控え壁がなかったことに加え、擁壁の上にコンクリートブロック塀を設けたことに対しても疑問があります。

おそらく、最初から擁壁と一体に設計されたものではなく、あとから付け足したもの。

擁壁とコンクリートブロック塀の緊結の弱さが懸念されることが一つ。

もう一つは地面からの高さ。地面からの高さがあればあるほど、倒壊時には危険なものになります。

そもそも、ブロック塀はコンクリートブロックを積み重ねたもの。構造的に強固なものではなく、日本が今まで経験した地震でもコンクリートブロックの塀が道路側に倒壊することはたくさんあったはず。

「学校の建物脇の通学路に面してコンクリートブロック塀を作る事自体が問題があること」という指摘もあります。

コンクリートブロック塀があるお宅はぜひ点検していただきたい

施工費の削減や施工側の知識不足などで、鉄筋不足や施工不良・控え壁を設けないで作られたブロック塀は数多くあります。

建築基準法に違反しているかしていないかということは、建築士であったり設計・施工管理に携わる方が調査しないとわからないものです。

しかも、あきらかに劣化しているものでない限り、年数が経過していればしているほど違法建築だとか、危険性があるものだとは意識しません。

これを期に、一般住宅でもコンクリートブロック塀があるお宅はぜひ点検していただきたい。

専門業者に依頼して点検・調査をしてもらうのが一番です。

家主さんが自分で確認する際には、福岡県建築都市部建築指導課が作成したパンフレット「ブロック塀を詳しく知ろう」(PDFファイル)はわかりやすくて参考になります。

千葉市作成のパンフレット「おたくの塀は安全ですか?ーブロック塀の正しい施工方法ー」(PDFファイル)も参考になります。

地震でブロック塀が倒れた際、道路を歩いている人が怪我をしたり命を奪うようなことがあれば、家主が責任を問われることになる可能性もあります

避難や救助活動などの障害にもなり得ます。

塀に限らず、物置や小屋なども点検するべきです。

学校・公共施設はブロック塀だけでなく施設全体の点検を

小学校や中学校などは、地震などの災害があったときには避難場所になる場所です。

安全性が求められます。

今回の地震では、高槻市も学校側も「違法建築であることの認識はなかった」と報道されています。

危険性が指摘され、市教育委員会の調査もあったのに「安全に問題はない」という判断。

建築士・建築施工管理技士が図面・現地の状況を見れば、控え壁がないだけで問題だという判断ができるはず。

公共施設なのに、最初の施工から管理までずさん・いい加減。

災害時に避難場所になる小学校・中学校の通学路でこういった危険性があるのは大問題です。

6月19日に文部科学大臣も、全国の学校にブロック塀の緊急点検を要請しましたが、ブロック塀だけでなく施設全体の点検をしていただきたい。

通学路・避難場所への避難経路の安全性の確保

地震が起きたときには避難場所まで移動しますが、避難場所までの道路が通行できるのかも問題になります。

塀や建物が倒壊して道路が塞がれてしまえば、避難場所にたどり着くのも難しいことになります。

避難所の周囲の道路が幅の広い道路なら、通行できる箇所は当然増えますが、避難場所に指定されている建物の周囲の道路が必ずしも幅の広い道路ではありません。

小学校や中学校が初めから防災拠点として配置されたものではありませんし、道路も今まである道がそのまま使われていることが多いです。

避難場所に指定される建物は、施設としての安全性だけでなく、避難経路が確保されることも重要です。

学校の周りも、車のすれ違いもやっとできるくらいの幅員しかない道路は少なくないですよ。

あなたが住んでいる家から避難場所への道はどうですか?

私達の子どもたちが毎日歩く通学路に関しても、地震が起きたときに危険性があるところはあるかもしれません。

親としても、通学路を子どもと一緒に歩いたりして、地震が起きたときに危険性が考えられるところを把握しておいたほうが良いです。

行政だけに頼るのではなく、実際にそこを通る児童の親、地域の方が認識して改善する動きも必要です。

最後に

これを期に、ご自分の敷地に建てられているもの・家の周囲で危険性がある箇所の確認をしてください。

  • ブロック塀にかぎらず、自分の家の塀の安全確認をして貰いたい。
  • 自分の家の塀・建物が倒れて誰かが傷つけば、その持ち主の責任問題にもなりかねない
  • 親としては、通学路にある危険、最寄りの避難場所への経路の確認も必要

災害があったとしても、しっかりとした対策がなされていれば、危険は減らせます。

「まぁ、大丈夫でしょ」という意識が今回のように思わぬ事態を招くことになります。

どこでも大きな地震が起きる可能性がある日本。他人事ではありません。