怒る・叱るの違い|叱る手順と知っておきたいポイント解説
「怒る」と「叱る」。
言葉は違えど、「怒る」と「叱る」は同じような意味で使われることが多いと思います。
今回は「怒る」と「叱る」の違いについて考えていきます。
「怒る」と「叱る」それぞれの言葉の意味は?
まず、「怒る」こと「叱る」ことの言葉の意味から考えていきます。
以下引用部分は、広辞苑第四版(岩波書店)から抜粋
【怒る】の意味は
おこ-る【怒る】〘自五〙①腹を立てる。いかる。②叱る
【叱る】の意味は、
しか-る【叱る・呵る】〘他五〙①声をあらだてて相手の欠点をとがめる。とがめ戒める。
【怒る】の中に【叱る】の意味が入っていますが、違いがあります。
その違いについて説明していきます。
【怒る】と【叱る】は違うもの
【怒る】は感情を持つこと自体を表す
【怒る】は「腹立たしい・我慢できない」という『感情・気持ち』を持つことを表す動詞です。
自動詞と他動詞の違い
【怒る】と言う言葉は自動詞です。引用部分の〘自五〙は自動詞五段活用を表しています。
自動詞とはそれ自身の動作・作用を表す動詞のこと。他のものに影響を与えるはたらきはありません。
【怒る】ということは、「その人自身が腹立たしい感情を持つ」ことです。
「上司が怒る」「先生が怒る」というと、「上司・先生が腹を立てている、いかりの感情を持っている」という意味になります。
一方、【叱る】は他動詞。他動詞は、他に対する働きかけを表す動詞です。【叱る】ということは他の人があってことです。
「子どもを叱る」「部下を叱る」というように、叱る行為を受ける対象があります。
自動詞と他動詞のちがいについて、一部引用します。
動作・作用をそれ自身のするはたらきとしてあらわす動詞を自動詞じどうしと呼びます。
そして、動作・作用を他に対するはたらきかけとしてあらわす動詞を他動詞たどうしと呼びます。
自動詞と他動詞とのちがいは、動作・作用が他のものに影響を及ぼすかどうかという点にあります。
引用元: 自動詞と他動詞を学ぼう - 国語の文法(口語文法)
自動詞と他動詞の違いから見て、「怒る」と「叱る」は違うものです。
【叱る】の意味の「とがめて戒める」について
【叱る】の意味の最後の「とがめ戒める」について詳しく見ていきます。
「とがめる」ということは、広辞苑第四版(岩村書店)には
とあります。
「戒める」とは
【とがめ戒める】とは「取り立てて問だだして、過ちのないように注意する・教えさとす」こと。さとすということは「言い聞かせて納得させる」ことです。
【叱る】ことの意味を言い換えると
このことを踏まえて【叱る】の意味を言い換えると、
相手の良くないところや欠点を、指摘して、問いただし、過ちのないように教え、言い聞かせて納得してもらう
ということになります。
【叱る】というのは、相手の良くない点を指摘して「こうして欲しい」とちゃんと伝えて納得してもらうこと・相手の言動を変えようとすることが含まれています。
ここまでのまとめ
【怒る】ということは、「その人自身が腹立たしい感情を持つ」ことであって、他の人に対してどうこうするものではない。
【叱る】ということは、「相手の良くないところや欠点を、指摘して、問いただし、過ちのないように教え、言い聞かせて納得してもらう」こと。
【怒る】は自動詞。自動詞はそのもの自体の動作・作用を表す動詞であって、他のものに影響を与えるものではない。
【叱る】は他動詞。他のものに影響を与える動作・作用をあらわす動詞。相手があってのこと。
広辞苑以外でも辞書で調べると【怒る】の中に【叱る】の意味が入っていますが、これは日常生活の中で【怒る】という言葉が【叱る】と同じこととして使われているからだと考えられます。
元をたどれば意味も、動詞としての使い方も違うものです。
叱るときの手順について。「怒鳴るだけ」は叱ることの半分の行為です。
子どもに対して、
「やめなさい!」「だめでしょ!」
部下に対して、
「なにやってるんだ!」
と怒鳴ること。
これは「良くないことを指摘してやめさせる行為」または「やってほしくないことを伝える行為」です。
【叱る】の意味「相手の良くないところや欠点を、指摘して、問いただし、過ちのないように教え、言い聞かせて納得してもらう」からすると、怒鳴るだけの行為は【叱る】という行為の半分といったところでしょうか。
【叱る】時の手順としては、
- 相手の良くないところ・止めて欲しいことを指摘する
- なぜ良くないのか・なぜ止めてほしいのか理由を説明する
- 「こうして欲しい」ということを説明して、納得してもらう
という具合になります。
1.の指摘することについてですが、注意されることや「ダメだ!」「やめろ!」と強い口調で(怒鳴って)禁止の命令を出すことは、罰を与えることです。相手に嫌な思いを与えます。
意図的に罰を与えることもあるでしょう。しかし、その人のすべてを否定したり、相手の意欲まで奪うまでやってしまうのはやりすぎです。
叱る時は、冷静に「して欲しいこと」を伝える
2.3の部分では、「腹立たしい・いかり」の感情をもって怒鳴り散らしても、相手は「良くない理由」や「こうして欲しい」ことをちゃんとわかってもらえるでしょうか。
あなたが叱られたときのことを考えてみて下さい。
なにが良くないのか説明してもらって、「こうして欲しい」と冷静に言ってもらったほうが理解できるはずです。
「腹立たしい・いかり」の感情をぶつけられ、怒鳴りながら説明されても辛いし頭に入らないと思います。
冷静になにが良くないのかという理由を説明してもらって、「こうして欲しい」ということを伝えてもらったほうが納得しやすいはず。
そして、【叱る】時は長々くどくど説明されるよりも、要点がわかるように短く説明したほうがわかりやすいです。
叱る時のポイント
叱るときは、冷静にわかりやすく1.2.3の手順を踏む。
私自身、家で子どもを叱る時もこのポイントが頭にあることで、「怒鳴って終わり」ということはなくなりました。
叱る時には「腹立たしい・いかり・イライラ」とした感情は付き物ですが、叱ることの意味を知って「冷静に伝えて、わかってもらいたい」という想いを持つことで感情的に叱ることもかなり減りました。
まとめ
今回は【怒る】と【叱る】の違いと、叱る時の手順と知っておきたいポイントについて紹介してきました。
今回の記事ののおさらい
- 「怒る」と「叱る」は違うもの
- 「怒る」は自動詞。その人自身が腹を立てている状態のこと。
- 「叱る」は他動詞。相手があってのこと。『相手の良くないところや欠点を、指摘して、問いただし、過ちのないように教え、言い聞かせて納得してもらう』こと
- 叱る時の手順について
- 相手の良くないところ・止めて欲しいことを指摘する
- なぜ良くないのか・なぜ止めてほしいのか理由を説明する
- 「こうして欲しい」ということを説明して、納得してもらう
- 叱る時は冷静に「こうして欲しいと伝える」ことがポイント
職場で部下を叱る。家で子どもを叱る。
相手の行動を変えたいなら感情をむき出しにして怒鳴るのではなく、冷静にして欲しいことを伝えてみて下さい。
以上、『上手に叱る手順と知っておきたいポイント。「怒る」と「叱る」は違います。』という記事でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!。
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